GTDの持つ社員教育への将来性

2006年11月から始めて2010年の6月に至るまで、私がGTDのことを考え続けているのは、GTDに将来性があるからだ。GTDがただのタスク管理であれば、私はこんなにも興味は湧かなかっただろうし、GTDについて考えを突き詰めるのをとっくに放棄していただろう。

GTDとマネージャクラスの人々

GTDのビジネス対象となっているのは、基本的にはマネージャクラスなどの生産性の高い人々だ。 それは、彼らの生産性をより高めるためである。もちろん、そうではない人々にとってもそれなりの効果が得られる。マネージャークラスも、そうでないそれなりの人も、GTDの恩恵にあずかることができる。 それゆえに、GTDは万人に受け入れられている。

とはいっても、私がGTDが買いだと思っている将来性は「万人受け」だからではない。GTDは、それなりの人がマネージャクラスのような人々になるための、わかりやすいツールとして可能性を持ち合わせていること――これが私がGTDに将来性を感じている点だ。

会社の中で、マネージャクラスの人間に自分もなりたい!と思っている若手社員がいる。周りの彼の上司、その人の属する組織はその人に対して、どんな明解な回答、あるいはヒントを差し出すことができているだろうか?

メンバーがマネージャになるにはどうするべきか?

私が言いたいのは、GTDはメンバーがマネージャになるために、役に立つだろうツールだ、ということだ。

若手が成長してマネージャクラスの人間になるというのは、組織の役割としては、メンバーからマネージャに役割を遷移させる、というのと同じ意味合いになる。実際、この成長の間には、どんなことをして成長に結びつくのだろうか?

また、この成長する過程で、部長や課長レベルの上司から言われるヒントの言葉にこんなものがある。

  • 「広い視野を持て」 具体的にはどんな意味なのか?
  • 「長期的な考えを」 その考えに至るためにはどうするのか?

それらが具体的にどんな意味を示しているのかは、彼らから具体的に説明されることは少なく、そしてその方法について言及されることも少ない。

私自身が上記のようなことを言われてぶっちゃけ困ったのは、あまりに抽象度が高すぎて、身がなさすぎることだった。基本的に私が就職したことのある会社達は、いずれも自主性に富む、言いかえれば放任主義の会社だ。だから、そんなに教育や自己成長に対して細かい指定があったわけではない。だいたいマネージャーになった人の話を聞いてみたら、いつの間にかやってたみたいな話もある。これをすればOK!みたいな何かっていうのは見つかってないんじゃないかなと思う。

で、本屋に行ったりして、そういう風な抽象化をあげるような本やらフレームワークやらを読んでみる。確かに理論はできる。しかし血肉になるまでに、やる気と実践が続かない。今でこそわかるのだけれども、ここら辺の考えもある一定の訓練による成果だ。確かにやれば培われそうな気はするんだが、如何せん日常の一部に溶け込められない。

あるマネージャにどうやったらそういう考えができるようになったのか、て聞いたら「いつの間にか」という回答が返ってきたりもした。とすると、仕事をやってればそういう考え方もいつしか身に着くのかもしれない。

しかしである。

現状は「いつの間にか」は許せる状況ではなくなってきた。サーバがクラウド化する中で、仕事もクラウド化しつつある。昔に比べて、コミュニケーションも作業も電話やネットなど媒体が増え、仕事は複雑化している。しかも、社員が使い物になるまでの成長時間も短縮されている。彼らの言っていた「いつの間にか」の時間が、現状にはだんだんと少なくなってるんじゃないか。

そもそもマネージャの役割と作業とは?

いったん、成長後のマネージャが求められる役割と作業について見直してみた。

仕事は役割は変われども同じことだ。仕事は、ある状態からある状態へ変化するために行動する以外の何物でもない。

マネージャへ役割が変化すると、仕事の中で(1)どこをゴールとし、(2)どこからどこまでを、(3)誰に任せ、(4)任せた内容を後から確認するか、といったことを指示し、そして(5)全体のゴールに間に合わせるように調整する、といった作業が必要になる。

しかし、実際にはこれら全ての動作がうまくできる人はそうそういない。全体を見るのはうまいんだけど(5)、仕事の振り方はいまいちだったりするし(2)(3)、かといって、仕事の任せ方はきっちりしているのに(2)(3)、外部との調整が甘かったりする(4)。 すべてができる人がいても、忙しすぎる状況がそれを許さないことだってある。

新人マネージャは始めてなると、たぶん上記のような作業を始めて行う。もちろん、リーダーをこなしてそれなりにやってきたかもしれないけれど、新しい作業が思った以上のスコープで任されるのは確かだろう。マネージャになってから、マネージャの作業を学びとるのは非常にリスクが多く、できれば事前に、できるものならメンバーの立場から徐々にその訓練ができたらいいと思う。

その訓練のツールとなるんじゃないか、と思っているのがGTDなんである。

GTDはこのうち、(1)(2)の概念形成をGTDを繰り返すことによって確固たるものとし、(3)(4)をGTDのリストを作成することで把握することを学び、(5)を毎週のレビューステップを実行することで、徐々に上部から状況を見渡すことを学ぶことができる。

そうして、GTDを続けていくうちに、把握する時間のスパンが徐々に伸びる。

このような意味で、GTDは社員教育にとって将来性があるのだと、私は思っている。

GTDを実際に実行した際の問題点

しかし、上記のようなGTDを使った自然な成長は、今のところ見る限りにおいて難しく、実際導入するにはなんらかの工夫が必要なように思う。その理由のうち3つを挙げると以下のようなものが考えられる。

(1) そもそもGTDが上記のように役立つとは認識されていない
(2) 効果的なGTDを実施しなければ、上記の効果が得られにくい
(3) パースペクティブの概念を実施する必要がある

(1)について。私は実際、こういった成長を実感している一人だ。しかし、英語圏ではともかく、日本語圏内でそのように認識している人はあまり見かけない。仮にそのように成長していたとしても、本人自身が認識していないことがある。成長は、何かの承認なくして成り立たない。

(2)について。 他の人と比べて自分の認識が大いに異なることを感じることがある。その差異はどこで生じるものだろうか、とかんがえると実践方法が異なるからでは、とかんがえる。私は状況に助けられて、GTDに最適な状況にいたために、大きく成長できたと思う。そうでなければ、あの七面倒くさい作業など正しいに近く続くのは難しい。

(3) について。思考が大いに飛躍した、と思ったのがこのパースペクティブの概念のワークを実施したときだ。これをしたことによって、別々の階層の中に一つのエスカレータができあがったような気分になった。しかし、書かれているのと実際に実践するのとでは全く異なる。理論は所詮理論だ。

GTDが社員教育として効果的に稼働した後の可能性

上記のような問題点もあるが、しかしながら私はGTDには大きな可能性があるし、今後社員教育でも具体的に用いるべき方法だろう。

これが、社員の中で共通のツールとして認識されたならば、以下のようなことが実現できるのではないかと期待している。

  • 仕事に関して、共通的な考えがあるため相互理解が早くなる
  • 仕事間の枠についてクリアに話すことができる
  • 仕事のパーツについて理解しやすくなる
  • 仕事について、一律の概念を共有できるため、相互学習が可能になる

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